これは、ある日曜の日の出来事・・・
「次は、K様のお宅だ」
いつもと同じように、配達員のOはチャイムを鳴らし、返事を待つ。けれども、その返事が、どこか弱々しい。
「どうかされましたか?」気になって声をかけても、返事が来ない。「どうしたんだろう…」不安に思い、中を覗く。するとそこには、リビングのソファに横たわり、立ち上がろうにも立ち上がれないK様がいらした。
「大丈夫ですか?」そう声を掛けると、「前々から首の調子が悪くてね。昨日あたりから、痛みが全身に広がって、今は痺れがひどいんだ」K様はそう話すと、どうにか立ち上がり、歩き出そうとする。が、ふすまに倒れかかるように、バランスを崩してしまう。
「ご家族と、ケアマネージャーさんに連絡をとりましょう」配達員OはそうK様に伝え、連絡を取る。けれども、なかなか連絡がつかない。募る不安を隠すようにK様に話しかけるも、K様の呂律が、だんだんと回らなくなっていくのを感じた。
“このまま自分が配達を終えて帰ってしまったら、K様はどうなるのだろう。もしも今の症状が、大きな病気の前兆であったら。ふらついて転倒し、どこか打ってしまったら。このまま意識がなくなってしまったら“
最悪の事態が頭をよぎる。”今ここで、出来ることは、、、、“
「Kさん、意識がある間に病院へ行き、しっかりと診断を受けませんか?」そう提案をすると、K様は「そうしたい」と、強く頷いた。そして、配達員Oは続ける。「元気にお家に帰ってこれたら、電話をください。自分はその便りを、待っています」
救急車を呼ぶ間、K様の身支度を手伝う。着替え、貴重品の保持、そして家の戸締り。
「出来ることは、全てやりました。あとは、K様からのお電話を待つだけです。これが、私たち配達員の仕事ですから」